「ハク君って、なんでしゃべんないの~?」
「今日も先生の言うこと聞かなかったんだよー」
同じ年少の子どもたちは、もう立派に言葉を交わしている。
その中で、息子の遅れは誰の目にも明らかだった。
しかも入園した園は、僕の母園でもあり、昔から教育熱心で知られていた。
一時期は徹夜で願書に並ぶほどの人気を誇り、プールやピアノ、楽器、英語、宿泊行事やスキー学習など、多彩な経験を積ませてくれる幼稚園だった。
僕自身にとっても、園生活は楽しい思い出そのものだった。
――それでも、心はもう決まっていた。
よし、辞めよう。
息子の診断書を片手に、僕はゆっくりと携帯電話を耳に当てた。
コメント